夢日記 光るもの編
八月十四日 夜
名前を借りられた石
夢のなかで、ぼくは双子のような石を見た。パイライトと、まったく同じ成分でできているのに、結晶のかたちがちがうという。名前は白鉄鉱、マーカサイト。
不思議だったのは、宝飾品の「マーカサイト」って呼ばれているものの多くは、じつはこの石じゃなくてパイライトなんだという話。同じ名前を、自分じゃないほうが着ている。そのことを、夢の中の白鉄鉱は怒ってはいなかった。ただ、少し困ったような顔で、錫みたいな白い光を静かに放っていた。
もっと切なかったのは、この石が「黄鉄鉱病」よりも深刻に、自分で分解していってしまうということ。表に出ているところから、褐色に、黒に変わっていく。誰にも触られなくても、時間の中で、ひとりで姿を変えていく。ぼくはそれを、遠くから見ているだけだった。何もできなくて、でも見ていたかった。
名前を借りられて、そのうえ自分でも壊れていくのに、光る石じゃないというのがまた良かった。蛍光しない、ただの錫白色。目立たなくて、静かで、それでも確かにそこにあった石。ぼくは、その静かさが好きだと思った。
今日のところは、ここまで。