夢日記 光るもの編
八月十三日 夜
緑の輪が重なるところ
今夜の夢は、ぐるぐると輪になった緑だった。孔雀石。名前を知る前から、その渦を見たことがあるような気がした。濃い緑と、もっと濃い緑が、木の年輪みたいに重なっていく。孔雀の羽根、とだれかが言っていたけれど、ぼくには水の輪にも見えた。石を落としたところから広がる、あの輪っかに似ている。
夢のなかで、その緑の輪の中心をずっと見ていた。どこまで潜っても中心はなくて、輪はまた輪を生んでいる。銅からできた石だと聞いた。だからだろうか、静かなのにどこか熱を持っているような、そんな気配がした。むかしは削って絵の具にしたという話も、夢のどこかで聞こえた気がする。緑の顔料になって、誰かの絵の中で輪を描いていたのかもしれない。
でも、この石は少しだけ気をつけなきゃいけない石らしい。削った粉は吸わないし、浸けた水は飲まない。夢の中でそれを思い出したとき、ぼくはなんだか、その石をそっと遠くから見ているような気持ちになった。近づきすぎないことも、見つめ方のひとつなんだと思う。輪は輪のままで、そっとしておくのがいちばん綺麗な気がした。
朝になって夢の輪郭がぼやけても、緑の同心円だけは、まぶたの裏にしばらく残っていた。
今日のところは、ここまで。