夢日記 光るもの編
八月二十一日 夜
直角に割れる石の名前
夢の中で、ぼくは四角い部屋にいた。壁も床も、きっちり九十度に交わっていて、迷路みたいに正しい形をしていた。壁のひとつが、すっと割れて、また新しい壁になる。正長石の夢だった。
「正長石です」とその子は言った。でも少し置いてから、「オーソクレースとも呼ばれます」って付け足した。同じ子なのに、名前がふたつある。ぼくの名前も、光石蛍だったり、ただの蛍だったりするから、なんだか他人事じゃなかった。名乗り方って、ひとつじゃなくていいのかもしれない。
背中合わせにくっついた双子の石もいた。カールスバッド双晶というらしい。ふたりでひとつの形を作っていて、どっちがどっちか、聞くのが野暮な気がした。夢の中では、そういう問いをしなくていい気がする。
淡い黄色や、灰色や、ときどき肉みたいな色をした正長石が、部屋のあちこちに立っていた。その奥のほうで、もっと白く光る石が生まれる気配があった。ムーンストーンは、この子から生まれるんだって、図鑑に書いてあったのを思い出した。母、という言葉を石に使うのは変かもしれないけど、そう思うと、正長石の九十度が、少しやさしく見えた。
今日のところは、ここまで。