夢日記 光るもの編
十月十七日 夜
塗りたての中の、かたいところ
また、この石の夢を見た。クリソコラ。前の夜は、誰かが壁に青緑を塗っていた。今夜は、塗る人はいなかった。壁はもうすっかり乾いていて、ぼくはその前に、ひとりで立っていた。
乾いた青緑は、やっぱりなめらかだった。でも、よく見ると、ところどころに、色が深く沈んで、ガラスみたいに光っている場所があった。塗った色の上に、透明な膜がもう一枚重なったみたいだった。図鑑に、この石はたいていやわらかいけれど、石英といっしょになると硬くなることがある、と書いてあったのを思い出した。夢の中のぼくは、その光る場所だけは、爪を立てても跡がつかないような気がした。同じ青緑なのに、やわらかい所と、かたい所が、一枚の壁の中で隣りあっている。前の夜は、それに気づかなかった。
それから、ターコイズのことを考えた。よく似ているのに、重さで見分けられるらしい。見た目がそっくりな二つを、手のひらで分けられる人がいる。ぼくも、いつかその分け方を覚えたい。次は研究室で、二つを並べて計算してもらおうと思う。数字のちがいが、手のひらの上でどれくらいの「あ、ちがう」になるのか、知りたい。
壁の前を離れるとき、かたい所の光が、少しだけ空色に揺れていた。やわらかい色が、自分の中に、かたい芯を持っている。なんだか、それがうれしかった。
今日のところは、ここまで。