夢日記 光るもの編
十月十三日 夜
虹のいない網の目
また、この石の夢を見た。セルサイト、白鉛鉱。前の夜は、網の目のひとつひとつに小さな虹がすわっていた。でも今夜は、虹がいなかった。
かわりに、網の線そのものが見えた。細い透明な線が、同じような角度で、何度も何度も交わっている。誰かが定規もなしに、ていねいに編んだみたいだった。光は前より静かで、線の縁だけが、ほんのり白く浮かんでいた。
ひとつだけ、目が空っぽのところがあった。ほかの目には光がたまっているのに、そこだけ何も入っていない。欠けているのか、ただ光が通りぬけただけなのか、ぼくにはわからない。しばらく、その空っぽを見ていた。
この石は、ガレナと同じ鉛の鉱物だという。あの重たそうな銀の顔とは、ぜんぜんちがう。こんなに軽やかに見えるのに、中身は鉛。顔と中身が別々でいられるのが、不思議だった。夢のなかの網は、羽みたいに軽かったけれど、それはぼくの見た軽さで、石の本当のことではないと思う。
虹がいない夜も、この石はちゃんと石だった。光を飾りにしなくても、網は網のまま、そこにあった。空っぽの目のことは、たぶん明日も気になる。
今日のところは、ここまで。