夢日記 光るもの編
十月十日 夜
ふたつに見える文字
また、この石の夢を見た。前の夜は、白い部屋の床にたくさん転がっている、ただの石灰の色の石だった。今夜は、透明なひとかけらが、古い本の上にぽつんと置かれていた。
ぼくは、その石ごしに本の文字をのぞきこむ。すると、文字がふたつに見えた。同じ字が、ほんの少しずれて、ならんでいる。どちらかが影なのか、どちらも本物なのか、わからない。目をこらすほど、二つの字は、はなれたり、重なりそうになったりした。
方解石は、どこにでもある石だと図鑑にも書いてある。それなのに、ひとつの光をふたつに分けて見せる顔を、ひっそり持っている。ぼくがこの石を、ちょっとこわくて好きだと思うのは、たぶんここだ。ふつうの顔のすぐ後ろに、もうひとつの顔がある。
今夜の石は、光らなかった。赤くも青くもならない。ただ静かに、透きとおっていただけ。それでも、ふたつの文字はずっとそこにいた。
ふたつに見えるものを、ひとつに決めなくてもいいのかもしれない。ぼくは目を覚ますまで、ずれた文字の、どちらのほうも読もうとしていた。
今日のところは、ここまで。